Time and Space

小林靖子脚本と時間SF作品を敬愛する者

未来戦隊タイムレンジャー CaseFile50「無限の明日へ」

CaseFile50「無限の明日へ」

(脚本:小林靖子 監督:坂本太郎
まだ全話書く余裕は無いのですが、この最終回は思い入れが強いので感想を書こうかなと


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前半、過去に戻ろうとするアヤセ達とそれを止めるリュウヤ隊長の構図。そしてアヤセとリュウヤ隊長の絡みで浮かび上がってきた衝撃の事実…「竜也たちとリュウヤ隊長の行動原理が同じである」ということですね。それまで「明日を変える」ために動いてきたタイムレンジャー5人とリュウヤ隊長は本質的には同じでした。

リュウヤ「自分の死を知ったら…それを変えられる手段があったら、誰だってそうする。そうだろ?」

アヤセ「あんたも明日を変えたくて…」

そして息絶えるリュウヤ隊長ですが、このシーンでアヤセとリュウヤの対比構造が浮かび上がるという見事な構成。
アヤセもオシリス症候群という病を抱え、現実というものに消極的でした。そんな時に竜也の「明日を変えようぜ」という言葉に救われたのですよね。自分にももしかしたら生きる可能性、自らの居場所(=タイムレンジャー)があるかもしれないと
でもそれはリュウヤ隊長も同じでした。彼も自らの死の運命を知った事で躍起になってそれを変えようとしたのですね。
でも運命は残酷であり、アヤセは生きる可能性を残されましたが、リュウヤ隊長は結局 死の運命に落ちてしまいました。

彼らの運命を分けたのは結局「自らの人柄」と「仲間の力」だった訳です。そう、直人が死んだ理由だって本質的にはリュウヤ隊長と同じ。直人やリュウヤは「明日を変える」という目的はタイムレンジャーと同じでもその視野には自分達しか見えていなかった。自らの運命を変えるために他人を蹴落としてしまったのですよね。そこがタイムレンジャーとの最大の違いで竜也たちは「明日を変える」ために動いても、周りの人達を助けるという事を決して忘れなかった。そういった彼らの優しさが自然と仲間を惹き付け、直人やリュウヤ隊長は自然と孤独になった。
これまで「明日を変える」という極めて個人的な目的のもとに戦ってきたタイムレンジャーですが、やはり最終的には真っ当なヒーローらしい結論となりました。
「明日を変える」ために戦う痛みを抱えた若者たち。そう、痛みを知っているからこそ他人の痛みが理解できる。だからこそタイムレンジャーは他人のためにも戦えるのですよね。逆に直人やリュウヤ隊長は同じ痛みを抱えた者でも結局は自己を優先してしまった。

こうしてリュウヤ隊長の死を見届けた未来人たち…非常にやるせない気持ちを感じながらもタックの言葉に励まされ21世紀に戻ることを改めて決意。
ここ…客観的に見ればアヤセ達のやってることは「歴史を変えるという反逆行為」なんですよね。本当ならば21世紀に大消滅が起きるというのが正しい歴史であり、それを変えようとする訳なので…でもそんなの関係ない。21世紀には彼らの積み重なった想い出がある、そして自分たちがかつて竜也の言葉に救われたように、今度は自分たちが竜也のいる世界を救いたい…そういう純粋な想いが彼らを突き動かします。
タックの「君達の選択は間違ってるかもしれない…でも僕は信じる。君達が自分で選んだ明日を…そこでまた会おう!」という言葉もグッときます。そう、正しい歴史や決められた歴史はなく選択肢の数だけ「明日や未来は無限に広がっている」タイムレンジャーは自分たちで未来を選びました。

そして21世紀…
ここからは涙腺崩壊不可避の名シーンが続きます。
大消滅が襲い、そして大量のゼニット…正に世紀末を感じさせる絶望感で竜也も諦めかけます…凄まじい緊張感です。そこに未来から戻ってきたタイムジェット!乗っていたのは自分が送り返したはずの未来人4人。
ここはヤバいです。遂に彼らが「21世紀を救い、明日を変える」という道に交じりあいました。
そしてユウリの「竜也、新しい道が見つかるって言ったわよね?私は…この道を選んだの」という言葉、48話で竜也が言った「ユウリ、新しい道が見つかるよ…きっと」という言葉に対する返答と取れます。
勿論、彼らを案じて未来に送り返した竜也の行為は無駄になりましたが、やはり竜也は複雑ではありながらも嬉しかったのではないかなと。良い未来があったかもしれないのに、それ以上に自分の世界(21世紀)を救うことを優先してくれた。それほどまでに彼らの絆が強固であったことを示す素晴らしい名場面。

大消滅を止める作戦会議…DVディフェンダーが必要と言うシオン。竜也はVコマンダーを差し出すことで4人が知らなかった「直人の死」を知らせました。これは秀逸だな~と感心。
避難者の中にいたホナミ…遂にドモンはホナミと再会、思いを確かめ合い、遂に決戦の時がやってきました。
絵面は見辛いですが、それでも素晴らしい盛り上がりですね。本当にこれまでの積み重ねが終盤になるにつれて結実していきます…そしてこの巨大戦で特筆すべきはで直人がやって失敗した事が竜也がやって成功したという事です。本当に2人は「勝者と敗者」、交わらない関係にあるのだなと…
でもやはり竜也が成功できたのは「仲間の力」のお陰。みんなが必死に頑張ってくれたからは成功できたわけです。2人の人柄の違いが仲間の有無を左右し、それが最終的に彼らの運命を決めたわけですね。
そして大消滅を止めることに成功した竜也と4人、遂に別れの時です。本当なら別れたくはない、でも世界はそれを許さないのですよね。でも彼らはやれるだけの事をやりきり、思い残す事はもう無い。だからこそ悲しくても悔いはない別れをする事ができたのかなと…
「大丈夫だ…俺は生きる」と笑顔で去っていくアヤセは特に印象的でしたが、ユウリとの別れもまた切ないですね。竜也はユウリに告白し、きつく抱きしめ合います。ユウリの最後の言葉もまた良い。そう、決してバラバラになるのではなく竜也と変えた明日の延長線にユウリ達はいる。それがどんな未来かは分からないけどだからこそ彼らは「明日に向かって一生懸命に生きる」

そして別れから1年…ホナミはドモンの子供を産んでいました。ここは多分ターミネーターのオマージュかなと。テーマや世界観的にも似通っていますしね。ギンガマンの黒騎士の最期もどこかターミネーター2を連想とさせますし、小林靖子さんターミネーターシリーズのファンなのかなーと邪推。

ここでかかる「未来のゆくえ」が神すぎる。竜也は「直人の分も一生懸命に生きる」と決意表明しました。いずれは浅見グループという運命にも向き合う事を決めます。ここで竜也を浅見会長の車が追い越す演出も良い…すれ違うのではなく追い越すというのがミソ。2人が同じ道を歩むという事を示しました。
ランニングしながらユウリ、アヤセ、ドモン、シオンのそっくりさんとすれ違います。そう、今と未来は繋がっていて、決して竜也たちは別れたわけじゃない。竜也が作る無限の明日の中に皆は生きている…
結局のところ31世紀がどうなったかなんて分からないし、竜也だって自分の未来である浅見グループ次期会長という運命は変えられてない。だけどその未来に対する受け止め方は変えられた。「未来や明日を変えるというのは即ち自分や行動を変えることである」というのが今作の結論だったのかな。竜也は直人に指摘される事でようやく変われ、直人は死を前にする事でようやく変われた事も「人間そう簡単に変われない」という見方もできますが
何かドラマとして美しすぎて言葉を失ってしまうのですが、何が良いって2話で竜也が未来人たちに言った「未来は変えられなくたって、自分たちの明日くらい変えようぜ!」という言葉の通り「未来は変わったか分からないけど自分たちの明日は確かに変わった」という事を実感させてくれた事ですね。このEDをもって未来人や現代人たちが紡いできたドラマや「明日を変える」というテーマが「浅見竜也の物語」に集約されて完結するという構造になってるんですね。このEDのカタルシスは本当に凄まじいですね。改めて素晴らしい作品だと実感できる最終回でした。


http://10932bwf.hatenablog.com/entry/timeranger/critique