Time and Space

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未来戦隊タイムレンジャー

さて、このシリーズ第24作目に位置する未来戦隊タイムレンジャーですが、今現在においてもこれ程 脚本家の小林靖子さんの作家性が反映された作品は他に無いと思います。
小林靖子さんは登場人物たちに過酷な現実や試練を与え、葛藤の末にそれを乗り越えさせるという作劇を好んで使っているのですが、それはこのタイムレンジャーで十二分に発揮されました。
ただ少し特殊だったのは現代人の竜也で、ユウリ、アヤセ、ドモン、シオンの未来人の面々に比べると背負っているバックボーンは軽いと言わざるを得ません。竜也は非常に溌剌とした若者で、未来人たちはどちらかといえば目の前の現実に行き詰まっているような様子でした。
ただこれは現代人と未来人とで別ベクトルのヒーローとしての成長を描きたかったのではないかと。
竜也は周囲から現実の過酷さを学び、未来人たちは竜也から前向きさや行動力を学んでいく。互いに無い物を培って支えあい、最後に真のヒーローになる物語を志向したのではないかと思います。

タイムレンジャーの構成は特殊で5人それぞれにドラマが設けられそれが終盤に向けてひとつひとつ結実していき、それが一つの「明日を変える」という壮大な物語となる。歴代でもここまで高度な事をやりきったのはおそらくタイムレンジャーのみと思われます。
また竜也や直人、アヤセやリュウヤ隊長を通して「生と死」「勝者と敗者」という容赦ない現実を提示しつつも何故そこに至るのかという理由付けも含めてキッチリとやってくれたのが素晴らしい。危うく選民思想にもなりかねない題材をギリギリのラインまで踏み込んで描いてくれました。
何より物語に巨悪と呼べる人物がおらず、皆、根は善人だったというのが特徴でしょうか。だからこそそんな彼らが抗えなかった運命の残酷さも際立つのですが、運命に勝てたかどうかの明暗を分けたのが「人柄や振る舞い」「仲間の力」であったというのは秀逸。全員が根は善人であるからこそ「正義も悪も立場が決めるものではなく心と行動が決めるものである」という事を作劇として示しました。
そして千年の狭間から生まれる歴史という抗いようのない大きな物語、個人の悩みや日常といった「小さな物語」のリンク。つまり「大きな歴史とその中にある個人の明日」という構図。この構図があるお陰で彼らの物語に壮大なスケールや骨太なドラマ性が宿る訳ですね
またタイムレンジャーの物語を支えている柱として「何気ない日常描写」があります。皆で食事やバーベキューをしたり、仕事や買い物なども描かれ、何より5人全員が一緒に暮らしているので戦隊の居住スペースがそのまま私生活として反映されるというのが大きいのかなと。全特撮で見てもここまで生活感の感じられる作品ってなかなか無いと思います。

そしてこの作品1番の良さは各登場人物の深みある造形であり本当に一人ひとりのキャラクターが素晴らしい。歴代でもキャラクタードラマの秀逸さ、完成度にかけては断トツだと思います。先程述べたように5人それぞれにドラマが設けられ、行動原理が皆、一貫して「明日を変える」事であったことなど基本造形がしっかりしているのも大きいのですが、シリアス、コメディ、日常シーンを大事にして積み重ね、大事な見せ場ではしっかりと盛り上げてきました。
リアルな心理描写に加え日常シーンの積み重ね、役者さん達の演技があったからこそあの生きているキャラクター達は生まれたと言える。特に好きなキャラを挙げるならやはり竜也、アヤセ、ユウリ、直人の4人は別格ですね。
特に竜也、主人公かつ狂言回しという面白い立ち位置で「明日を変える」という作品のテーマがそのまま反映されたキャラクターはとてもエネルギッシュであり何度現実を突きつけられても立ち直り、終盤、大消滅から21世紀を救う覚悟を決めて独りで戦う姿はヒーローそのもので、非常に魅力的なキャラクターであったと思います。今まで見てきた作品でも最も好きなキャラクターの一人です。

終盤の盛り上がりは流石でしたが、ラスボスがいないというのも大きな特徴でした。大消滅はどちらかというと災害ですしね。つまりそれまで自分の運命と闘ってきたタイムレンジャーの最後の敵は「世界の運命」であったという風に徹底して「運命と戦うヒーロー」であると強調したのも良い所。
最終回では、タイムレンジャー5人は真のチームとして団結し21世紀を守って真のヒーローとなりました。
要約すると、若者たちがヒーローをやりながら成長していくヒューマンドラマだった訳ですが、つまりジェットマンと同じ事を、でもジェットマンとは違う形で提示できたのではないかなと。
描かれる人間のカタチが真逆なので相反するようですが、実は提示している物語の形は同じ。

そしてこの作品のテーマであり、キャラクターの行動原理ともなった「明日を変える」最終回でそれを実現するなど、愚直なまでにテーマを徹底して一貫したのがこの作品の纏まりを支えているのだなと。

正に小林靖子脚本の頂点にしてスーパー戦隊「最高傑作」でした。